##01 看板に偽りあり

どういう経路で知り合ったのか、そこがハッキリ思い出せない。

ボードゲーム仲間の友人、みたいなポジションで何度か顔を会わせるうちにPCゲームで遊ぶようになったんだと思う。

2000年以前に発売された AoE や UT をプレイしていた頃。発売から若干遅れて流行るなんてのは珍しくもなく、今ほど情報が飛び交う速度は速くなく、トレンドのスパンもまだ長かった時代だ。今は廃れたメッセンジャー上で、彼はURと名乗っていた。

「ところでURって、どういう意味なんだ」

「これはね Ultra Rush、Ultralisk Rush の略」

「うるとらりすくらっしゅ」

「あれ、SC 知らんのか」

ほどなくして、身内で SC が(少しだけ)流行った。

 

私が UR とプレイして Ultralisk Rush を見たのは、忘れもしない、ある程度ゲームに馴染んだので「対戦、よろしくお願いします」と挑んだ、最初の数回だけだ。

自分の名前にするくらいだから、さも得意な戦法なんだろうと思い込んでいたが、残りは mutalisk が飛んでくるか、酷いときはzargring が押し寄せた。もっと言えば medic marine で駆逐されたり、たった2体の zealot で制圧されたりもした。流石に、どういう事なのか気になって聞いたことがある。

「Ultralisk Rushはやらないのか?」

「30分くらいかかるからな。犬が走って10分で終われば、同じ時間で3回遊べてお得」

お蔭様で、1週間も経たずに Science Vessel に蹂躙されることになった。

 

ゲームをするうえで、彼は自身の効率や合理性を好んだ。立ち止まる時間を惜しんだ。反省は一瞬で終わらせる、過ぎたことはあまり口にはせず、次のプランを練る。そういう人格だったので、多少なりとも衝突はした。ネットゲームの他プレイヤとも同様だった。文字チャットの頃からもそうだったし、ボイスチャット(この言い方が"古い"と彼は笑った)で直接コミュニケーションが図れるようになり、傾向は顕著だったと思う。

  

罵りあう事すらできないのが、今はまだ辛い。